オレンジとの再会

あたしの中にずっとオレンジがある。
特にオレンジが大好物なわけではないのに、気がつくと、あたしのみえない一番奥の方に、オレンジはころがっていた。15才くらいのころ、オレンジは強く香った。そして10代の終りになり、オレンジは次第に腐敗していったのだ。やがて、あたしから香りは消え、体中が固い石でいっぱいになった。
オレンジが帰ってきたのは、ふとしたきっかけからだ。
おととしの春、あたしは新しいカメラを手に、新宿へ向かった。その時のあたしは、風化したパラフィン紙のようだった。小さな風が吹いても散りそうなカラダで、新宿の地下道に座り込み、瞬きをするように写真を撮っていた。いくつもの人の流れを横切り、地上に出たあたしは、昔からある果物屋を思い出したのだ。
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「そうだ、オレンジを撮らなければ」
そのようにして再会したオレンジだったが、少女時代のオレンジのように強く香ることはなかった。でも、時間をかけ、すこしずつ、そう、初めは半透明だったその果実は、消えたり現われたりしながら、あたしの中で増殖をはじめた。

これから、大量のオレンジを買いに行く。渋谷の果物屋に、オレンジは何個くらい売っているのだろう? あたしはそれを抱えてホテルへと向かう。
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# by riz-blank | 2010-02-14 02:02 | 写真

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