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御苗場2010

大量に撮影したオレンジの写真は『御苗場』に展示しました。
(2010.3.11.~14/パシフィコ横浜「CP+」会場内)

<くり返されるオレンジという出来事>
もっと、もっと、あたしの内部を洗い流すように、降りつづけばいいのに。破れた表皮から溢れだすオb0122664_1011161.jpg
レンジを、乱暴に舌で吸い上げ、おもいきり囓りついた。内部が露出する。乳房がオレンジの水玉に染まる。(また、ハエが増えはじめる)床にしゃがみこんで、オレンジを産む。つるん、つるんと、つややかな実が、古いカーペットに産みおとされていく。産みおとされたオレンジを拾いあげ、よく冷えた水槽に浮かべる。鍵のあく音。けれど誰も入ってはこない。「あぁ、お腹がすいた」冷蔵庫をあける。オレンジがキチンと並んでいる。牛乳ビンを取ってきてごくごくと飲んだ。そして、ゆっくりと、ベッドに横たわる。乳房が張っている。わけもなく涙があふれてくる。ハエの音。ハエの音。まぶたを閉じる。カーテンをあける。光が室内のすみずみにまで満ち、シーツがモノクロの波となって寄せてくる。どこかで水が流れている。ぽたぽたとしたたる水音は、スイッチが切り替わったかのように、激しい流れとなったが、いったいどこから聞こえてくるのか、どこを流れ落ちているのか、まるでわからない。球体の内側が、めざましく波打っている。窓を開け、球体を投げ捨てる。静寂が訪れる。扉を開けて、出ていく。ああ、微細な、埃のような水音、が、剥がれ落ちていく。オレンジに突き立てた爪を、ゆっくりとはずす。手のひらを伝った果汁は、手首から肘へと流れていく。まだ固いオレンジの表皮に唇をつける。雨がもっと降ればいい。固く閉めきった湿度の高
い部屋に、オレンジの香りが充満し、息苦しい。もっと、もっと、あたしの内部を洗い流すように、…

by riz-blank | 2010-04-30 12:39 | 写真

誰?

「気をつけろ」と声がする。
(どこから?)
(誰が?)
(何のために?)
鈴だ。
いつもバッグに付けている銀のオルゴールボール。ささやいているのはこの鈴と確信する。
バスは田園風景を走っている。車内には運転手以外には3人程。皆だまったまま、ぼんやり車窓を眺めている。あたしは鈴がついたバッグを膝に置き、傾いた陽が水田に反射するのを見つめている。
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スピードをあげたバスは、予定より10分程早く駅に到着した。あたしは立ち上がり、バスを降りる。その時、シャラン、と音がして、横断歩道に鈴が転がった。
(やっぱり、とあたしは思う。)
駅のホームに着くと、空に黒い雲が広がり、激しい雨が降りはじめ、雷鳴が轟いた。
電車を降りると、雨は降っていなかった。駅で待っていた子供が「ひどい嵐、大丈夫?」ってメールきたけど、何のこと? と尋ねるので、だって、空が割れるような雷雨だったでしょう? と答える。「何それ? 幻? いたずらのオバケに幻覚見せられたでしょう?」と、子供。

ずっと頭の中で聞こえていた、「気をつけろ」の声が、今日は少し小さくなっている。
このノートを付けてから帰宅すると、ハリネズミのルビーが死んでいた。
(おまえだったの?)
WHSという難病にかかって1年、闘病の日々だった。
ずっとねていた針が立っているのを見た子供が、
「魂(こころ)がぬけちゃったからだね。」という。そうなんだね。
今朝、うごかない体で、おいしそうにスープを飲み、そしてあたしの「おいしい、おいしい」という声を聞いて笑っていた。魂(こころ)がぬけたとき、鈴はどんな音で鳴ったのだろう? おまえは何を伝えたかったの? ありがとう、ちいさな魂。
by riz-blank | 2010-04-29 02:12 | 日々…

オレンジというエロス

もう2ヶ月以上も前になるが、あたしは生まれて初めて、写真撮影のためにホテルを予約した。渋谷にある「サクラ・フルール青山」は、ヨーロッパ風プチホテルで、映画『ペネロピ』の日本公開の際、イメージルームとしてタイアップされたという真っ赤な部屋がある。その日はバレンタインデーだったが、あたしは真っ赤なその部屋を予約した。ただし一緒に泊まるのは秘密の恋人ではなく、たくさんのオレンジである。
街の果物屋さんというのはたいていちょっと古びていて、買うわけでもないのになぜかよく覚えているものだ。渋谷の果物屋さんはうるおぼえで、それは本当にあったのか、夢で見たのか、よくわからなくなってしまった。あたしはインターネットで検索し、記憶と結びつけ、大体の場所の見当をつけておいた。
ホテルでチェックインをすませ、部屋のドアを開ける。真っ赤な壁の前に、アイアンベッド。おそろいの椅子。パリッとしたシーツ。側面の壁には『ペネロピ』の写真が額に入れて飾ってある。
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あたしは大きなキャリーバッグを引きずり、渋谷の雑踏へと向かった。
果物屋さんはあたしが知っている店ではなかった。改装したのか、別の店なのか、わからない。オレンジは全部で20個。あたしが思っていたよりも少なかったけれど、とても大振りでおいしそうだ。「オレンジを全部ください」というと、お店の人はとてもびっくりして、あたしの顔をじっとみた。痛んでいるオレンジをよけて、19個のオレンジを買い、キャリーバッグに詰めて、また駅の雑踏へ向かう。
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ちょっと心細かったあたしは、青山に住む女友達に「お願い、遊びに来て!」と頼んでいた。オレンジを撮り終わった頃、1階のカフェで会うことになっている。
あたしは大急ぎで戻り、室内で撮影を始めた。
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夜、21時半、女友達が1階のカフェにやってきた。
「きれいなネックレス!」「ここにくるのに普段着じゃあと思ってあわてて付けてきたの。」「そんなふうにみえないよ。」いつものおしゃべりをしながら、「ほら」と、パソコンに取り込んだ、撮れたてのオレンジの写真をみてもらう。
「これ、きれい…」浴槽にオレンジをしずめて、懐中電灯で発光させたオレンジの写真を見て女友達が言う。
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テーブルに置いたオレンジのアップ、皮を剥いたオレンジ、濡れたオレンジ、浴槽に大量に浮かんだオレンジ、水に打たれるオレンジ、ベッドに転がるオレンジ、シーツに包まれるオレンジ、床に広がるオレンジ……
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「あと、引き出しから溢れ出していたり、ドアから傾れでているオレンジがあってもいいかも。」と言われて、あたしもそうだな、と思う。

ずっとおしゃべりをしていたかったけれど、まだ撮らないといけないし、カフェは閉店の時間になってしまった。用意しておいた友チョコと、大量のオレンジを(強引に)プレゼントして、さよならをした。深夜、青山通りはシンとしている。気をつけて帰ってね。女友達は重たいオレンジを抱え、歩いて自宅へと向かっていった。

深夜、引き出し、ドア、冷蔵庫から溢れるオレンジや、ベッドの布団に埋もれたオレンジなどを撮り、眠りについた。
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池田満寿夫の小説に『ミルク色のオレンジ』という作品がある。少女の頃に読んで、強烈な印象を焼き付けられたから、あたしのなかにあるオレンジは、あるいはこの小説が原点なのかもしれない。「オレンジはおいしいかい」という詩を書いたのは16才の時だが、小説を読んだのが先か、詩を書いたのが先か、あたしのオレンジの記憶はどこかで混ざり合ってしまって、もう思いだせない。どちらにしてもオレンジは少女の持つ「性」であり、それはどんなに濡れていても、熟しても、破れても、壊れても、大人の女にはならない。むしろ、植物的な生命力をもったエロスそのものだ。
19才の頃から、あたしのオレンジは次第に腐敗していった。キャンバスに描かれたオレンジは灰色がかっていたし、詩のなかに出てくるオレンジは「腐りきったオレンジ」だった。生命力は衰弱し、以降あたしは、離人症の現実に悩まされつづけた。
今になって突然、オレンジを撮りたくなったのは何故だろう? 衰弱し消えそうなあたしの前に、遠い日のあたしがオレンジをとどけにきたのだろうか? あたしは16才のあたしに助けられたのかもしれない。
by riz-blank | 2010-04-24 01:28 | 写真

沼の前でこわい話をした

沼はこわい。
深さがよくわからない。
そもそも底がはっきしないのだから、どこからどこまでを深さというのか? よくわからない。
沼にはたくさんの生き物が住んでいそうである。

先日、よいこぐまさんと目黒の自然教育園へ行った。
入り口でピンクのリボンを付けて中へ入ると、樹木の間を遊歩道が伸びている。都会にこんな林があるんだ。
道端に「1.茂みの中から強い香りがしませんか。」と書いてあったので、ふたりで柵の中までからだを乗り出して匂いを嗅いだが、なんの匂いもしない。ちょっと枯れかけた花が咲いていたので、くんくんと匂ってみたが、やっぱりだめだった。「においません。」と、ふたりして笑いながら、奥へと進んでいく。
園内マップをみると、この先に「水鳥の沼」があるようだ。
沼に着いた。
あたしは沼を見たことがあっただろうか? 以前、沼の近くまで行ったが、こわくて寄らなかったのではなかったっけ?
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「水鳥の沼」に、水鳥は1羽もいない。
覗き込むと、濁った水面の奥に、泥の底が見える。案外浅いみたいだ、とよいこぐまさんがいう。
沼の前にベンチがある。ここに座ろうよ、あたしはよいこぐまさんを誘う。彼女は今、怪談を書いていて、こわい話を募集中である。どんよりとした水面、久々の天気で空はとても高い。
あたしたちが交互にこわい話をしていると、よいこぐまさんが突然、「あれ!」と沼を指差す。おお、指の先には、この沼の主、巨大な鯉が泳いでいる。
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よいこぐまさんの家に住むご先祖さまたちの話、近所の神社や、埋められた井戸の話、あたしが小さいときに体験した変死体のゆうれいの話、半蔵門の職場で体験した、幽体離脱や、“前の日のあたし”を見てしまった同僚の話・・・時間を忘れて話し込んでいるあいだ、灰色の巨大鯉は、ゆっくりとゆっくりと沼を旋回している。
「あっ亀!」またもや、よいこぐまさんの指の方角を見ると、一瞬亀が顔を出し、もぐってしまった。「ブリキの亀みたいだった」よいこぐまさんは言う。
日が傾きはじめたので、「そろそろ歩く?」とあたしは誘う。満開の桜、桜の花びらに覆われた池。青もみじ。ごつごつした大木の幹に触ったりしながら、歩いていく。湿地帯で小川や夢の中のような遠くの花を見ていると、近くにいたカップルが、鳥がいるよ、と教えてくれる。樹木の向こうにとても大きな鳥がたたずんでいた。
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(帰宅してから調べるとアオサギだった。体長80~100センチもある。)
出口に近づいた。日陰のあちこちに、ぜんまいと生まれたての羊歯が生えている。「羊歯はうつるんだよ」とあたしはいう。「羊歯に触るとそこから生えてくるよ。」
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生まれたての羊歯は毛で覆われていてふさふさしている。ふたりでそうっと触れてみる。
「あっ、羊歯を触った手で目をこすっちゃった。。」よいこぐまさんがいうので、「目から生えるよ~」と笑いながらあたしたちは自然教育園を後にした。
by riz-blank | 2010-04-18 15:10

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